旅と本が好きな皆さんこんにちは。ライターのナオです。
今回ご紹介する旅本は、角田光代さんの「いつも旅のなか」です。
『八日目の蝉』などの作品で知られる直木賞作家の角田さんですが、「旅することは、数少ない私の純粋趣味である」というほどの旅好き。
本書も、旅行記というよりは“旅の記録”という言葉がしっくりくる内容になっており、作家である著者ならではの視線で旅情がつづられています。
「いつも旅のなか」はどんな本?
もとは、「生本」という雑誌で二年間にわたり連載していたエッセイを、一冊にまとめたのが本書。
角田さんにとって旅とは“純粋趣味”であり、旅について何かを書く(仕事にする)のは絶対にやめようと思ってたそうです。
そんな角田さんがこの連載をはじめた理由をこう書いています。
旅を終えて帰ってくると、どうしても書き記したくなる。カメラにはおさめきれなかったものごとを、書きつけておきたくなる。そうしてたいがいが、カメラにはおさまらないことばかりなのだ。
「いつも旅のなか」あとがきより
そんな、旅の記録を後で読み返してみると、その“旅”はもう終わってしまっており、まるで他人の旅話を聞いているような感じがしたそうです。それで、書いてもいいんだなと思えたそうです。
そんな、角田さんが旅で感じた感動や失望、おかしみや悲しみが書かれた本書は、誰かの旅日記を覗き見るような楽しみがある一冊です。
全22か国の旅の記録を写真と親しみやすい文章で味う

本書では、モロッコ、ロシア、ギリシャ、オーストラリア、スリランカ、ハワイ、バリ、ラオス、イタリア、マレーシア、ベトナム、モンゴル、ミャンマー、ベネチア、ネパール、プーケット、台湾、アイルランド、上海、韓国、スペイン、キューバ、全22ヵ国(24編)の旅の記録が収めらており、各章10ページ程度の短編の合間には、印象的なモノクロ写真も挿入されています。
個人的に好きだったのは、「祈り」と題されたスリランカのエピソード。
当時、恋人と文学賞が切実に欲しかった角田さんが、鳴らすと願いが叶うと言われている、聖なる山の頂にある鐘をめがけて、ゲリラ活動真っ盛りのスリランカを一人で旅する話です。
ぎゅうぎゅうの満員電車やバスに揺られ、山道を歩き、山頂で選ぶのは恋人か文学賞か果たして!?
気になる方はぜひ本書を読んでみてくださいね!
こんな人にオススメの1冊
本書は名所の紹介のようなガイドブック的な要素は薄く、著者である角田さんの旅の記憶を追体験するような一冊になっています。
読んでいるうちに“やっぱり旅っていいよね”って気持ちがムクムクとわいてきて、バックパックひとつで一人旅に出たくなること間違いなし。
日々の生活になんだか疲れてしまった人にとって、旅へいざなう一冊になるでしょう。
各章が短いので、通勤時間や夜寝る前に少しづつ読むのもオススメです。