お経を書き写す写経は印刷技術が無かった時代に教えを広めるために始まったとされています。やがて祈願や供養のために行われるようになり、現代においては「心身を落ち着かせたい」「集中力を高めたい」など、写経をする人の目的も様々になりました。
多くのお寺で写経会を開いており、宗派を問わず一般の人も受け入れてくれますが「一人で落ち着いて写経をしたい」「時間を気にしたくない」「字に自信がないので誰かに見られずに書きたい」などの理由から「自宅で写経をしたい」と考える人も多いようです。
ここでは自宅への写経セットの送付、郵送での奉納に対応しているお寺やお手本をダウンロードできるお寺・サイトをピックアップしてご紹介します。
写経未経験の人へは写経のやり方と心得を簡単にご紹介しますので、目を通してから写経に挑戦してみてください。
写経のやり方・心得
道具の用意
まずは写経に必要な道具を揃えましょう。
- 小筆
- 硯 (すずり)
- 墨
- 写経用紙
- 文鎮
- 下敷き
道具選びに迷ったら写経に必要な道具が一式揃った写経セットがおすすめです。最初からあまり高価なものを買いそろえる必要はないでしょう。
また、気軽に始めたければ筆ペンでもいいですし、筆を使うことが難しいと思う人はボールペンでも構いません。
写経を始める前に
静かな場所を選びましょう。正座ではなく、椅子で行っても構いません。机の上には余計なものは置かず、整理整頓をして綺麗にしましょう。
環境が整ったら、次に身なりを整えましょう。手を洗い、口をすすいで身を清めます。
写経の作法
- 環境、身支度を整えたら心を静め、合掌をします。
- 静かに墨をすります。
- 『般若心経』を唱えます。
- お経はお釈迦様の大切な教えが綴られているものです。一文字一文字丁寧に書き進めていきましょう。
全てを一気に書く必要はありません。数日に分けても構わないのでゆっくり、間違いが無いように書くことが大切です。 - 本文を書き終えたら日付、願い事、氏名を書きます。願い事は「為」「右為」の文字の下に四文字熟語で書きます。
例)健康祈願・無病息災・厄除開運・安産祈願 など
必ずしも四文字熟語である必要はなく、「この恋が実りますように」などでも問題ありません。その場合には「為」「右為」の文字は不要です。 - 書き終えた写経は大切に扱いましょう。お釈迦様のお言葉をゴミ箱などに捨ててはいけません。
お寺に奉納するか仏壇がある場合にはお供えしましょう。奉納するまでの間はきれいな場所で保管しましょう。
写経初心者にはなぞるタイプがおすすめ
写経用紙にはあらかじめ薄くお経が書かれており、それをなぞるタイプと、何も書かれていない写経用紙に手本を見ながら書き写す、もしくは手本に重ねて書き写していくものがあります。
初心者や毛筆に慣れていない人はなぞるタイプの写経がおすすめです。お寺によって異なるので事前に確認しましょう。
お経の種類
写経をするお経は何でも構いませんが、初心者には約270文字と短めの般若心経がおすすめです。写経会などでも広くこの般若心経を写経しますが、お寺によって異なりますので確認してから申し込みをしましょう。
自宅での写経に対応しているお寺
ここでは、郵送による自宅への写経セットの発送、奉納に対応しているお寺を紹介します。
道具は含まれていませんのでご自身で準備してください。
東大寺
奈良県を代表するお寺の一つ、東大寺では自宅で書いた写経を郵送で奉納すると奈良の大仏の名で広く親しまれている大仏様の胎内に納められ、所願成就を祈念をしていただけます。
種類:華厳唯心偈 (百字心経) (100文字)と般若心経(約270文字)の2種類
料金・奉納料:各1500円
- Webから申し込み (https://www.todaiji.or.jp/sutra-and-goshuin/sutra/myself/)
- お手本、説明と解説の小冊子、写経用紙、奉納用封筒、写経奉納芳名録とあわせて振込用紙(郵便振込)が届くので、奉納料を送金
- 書き終えた写経、芳名録カードを奉納用封筒に入れ郵送

名称
華厳宗大本山 東大寺 (けごんしゅうだいほんざん とうだいじ)
住所 [Google Map]
〒630-8587 奈良県奈良市雑司町406-1
電話
0742-22-5511 (写経についての問い合わせは写経係まで)
公式サイト (写経についての詳細)
https://www.todaiji.or.jp/sutra-and-goshuin/sutra/myself/
薬師寺
古都奈良の文化財の構成資産の一つとして、ユネスコ世界文化遺産に登録されている薬師寺も自宅での写経に対応しています。お手本を見て書き写してもいいですし、重ねてなぞる事もできるので初心者でも安心です。
納めた写経はお経があげられた後、お堂の中に永代供養されます。(※永代供養されるのは薬師寺の写経用紙に書かれたもののみです)
種類:般若心経 / 薬師経 / 唯識三十頌
料金・奉納料:般若心経 2000円 / 薬師経 4000円 / 唯識三十頌 5000円
上記に併せて発送諸費用 400円が必要
- WebもしくはFAX、ハガキで申し込み
- 振込用紙(郵便振込)が届いたら奉納料を送金
- 写経用紙、お手本、写経の作法などが届く
- 書き終えた写経を郵送

名称
法相宗大本山 薬師寺
住所 [Google Map]
〒630-8563 奈良県奈良市西ノ京町457
電話
0742-33-6001
公式サイト (写経についての詳細)
https://yakushiji.or.jp/prayer-osyakyo/
東寺
写経を京都のシンボル的存在である五重塔 (国宝) で知られる有名な東寺 (とうじ) では、納めた写経はその五重塔の塔内に奉納されます。
写経用紙もは予め薄くお手本が書かれていますので、なぞる事に集中して書き進める事ができます。
種類:般若心経
料金・奉納料:2000円 ※別途送金手数料と返信の郵送料金が必要
- WebもしくはFAXで申し込み (もしくはハガキで申し込み)
- 写経用紙、小冊子、納経カード、納経用の返信封筒とあわせて振替用紙が届くので送金
- 書き終えた写経を返信封筒で郵送

名称
真言宗総本山 東寺 (しんごんしゅうそうほんざん とうじ)
住所 [Google Map]
〒601-8473 京都市南区九条町1番地
電話
075-691-3325
公式サイト (写経についての詳細)
https://toji.or.jp/shakyo/application/

高い歴史的価値が認められている東寺にはいくつもの国宝や重要文化財が保存されていますが、見どころはそれらだけではありません。桜や紅葉、蓮など四季折々に色づく自然と歴史的建造物のコラボレーションは美しく、ライトアップが行われる夜間特別拝観には特に大勢の観光客でにぎわいます。
浅草寺
東京随一の観光スポット、浅草寺でも自宅で写経ができるように郵送での受付をしています。
写経用紙にはなぞり書きできるように薄墨で百萬巻観音経が書かれているので、初心者でも心配なく書く事が出来るでしょう。
1年間に奉納された写経をご宝前に奉安し、年に1度行われる写経供養会で供養していただけます。
種類:百萬巻観音経
料金・奉納料:1000円+送料 94円 ※別途奉納する際の送料が必要
- Webで申し込み
- 写経用紙、奉納証、納経カードとあわせて振替用紙が届くので送金
- 書き終えた写経を郵送

名称
金龍山 浅草寺 (きんりゅうざんせんそうじ)
住所 [Google Map]
〒111-0032 東京都台東区浅草2-3-1
電話
03-3842-0181
写経についての問い合わせ:03-3842-0707(浅草寺教化部直通)
公式サイト (写経についての詳細)
https://www.senso-ji.jp/info/shakyo.html

浅草寺のルーツは約1600年前まで遡ることができ、都内でも一番古い歴史あるお寺です。浅草繁栄の歴史と共にあり続けた浅草寺。その魅力に迫ります。
成田山新勝寺
新勝寺は全国屈指の参拝客数を誇るお寺です。毎月28日に予約制で写経会が行われていますが自宅であればいつでも、自身の都合のいい時に写経をする事が出来ますね。写経セットにはあらかじめ薄墨で般若心経が印刷された写経用紙が3枚含まれていますので家族や友人と一緒に写経体験をしてみてはいかがでしょうか。
種類:般若心経
料金・奉納料:3000円+送料 300円
- Webで申し込み
- 写経用紙3枚、写経のしおり、納経用封筒とあわせて振替用紙が届くので送金
- 書き終えた写経を納経用封筒に入れて郵送

名称
成田山新勝寺 (なりたさん しんしょうじ)
住所 [Google Map]
〒286-0023 千葉県成田市成田1番地
電話
0476-22-2111
公式サイト (写経についての詳細)
https://www.naritasan.or.jp/lecture/shakyo/

成田山新勝寺 (なりたさんしんしょうじ) は1080年あまりの深い歴史を持つ、千葉県成田市にある真言宗智山派(しんごんしゅうちさんは) のお寺です。 厄除け大社として広く知られ、初詣だけで300万人、年間で1000万人をこえる参拝客が訪れ、川崎大師、高尾山薬王院と並んで関東三大本山と呼ばれています。
写経のお手本や用紙がダウンロードできるサイト
ここでは写経のお手本や、写経用紙がダウンロードできるサイトをご紹介します。
なぞり書きをする薄墨タイプと、お手本、もしくは重ね書きをする通常の墨タイプのものがありますので、ダウンロードする前に確認しましょう。通常のコピー用紙ではちょっと趣が無いな、と思う人には和紙タイプのプリント用紙に印刷するのもおすすめです。
書き終えた写経はお寺で奉納していただくか、お炊き上げしていただきましょう。そのお寺で配布している写経用紙でなければ受け付けてもらえない場合や、奉納料もそれぞれですのでお寺に持ち込む前に確認が必要です。
円覚寺 公式サイト
807年 (大同2年) に建立された青森県西津軽郡に位置するお寺が運営する公式サイトでは、薄文字で書かれているなぞり書き用の用紙、罫線のみの用紙、一文字に一つ蓮台が描かれた用紙など、複数のタイプの写経用紙をダウンロードする事ができます。いずれも般若心経でA4サイズの用紙に印刷する事が可能。「一般的な写経は文字が小さくて目がつらい」というかた向けに文字の大きいお手本や写経用紙をダウンロードする事も出来るとっても親切なサイトです。
書き終えた写経は円覚寺にて一回につき1000円以上の奉納料で奉納を受け付けてくれます。
こちらの公式サイトでは写経の心得から書き間違えてしまった際のお直しの方法など、細かく説明がされていますので写経初心者さんは是非参考にされるといいでしょう。
名称
円覚寺 (えんがくじ)
住所 [Google Map]
〒038-2324 青森県西津軽郡深浦町深浦浜町275
公式サイト
https://www.engakuji.jp/
ダウンロードページ
https://www.engakuji.jp/shakyo/shakyo-download/
金剛院 公式サイト
東京都豊島区にある金剛院 (こんごういん) の公式サイトでは般若心経のを始め、23文字の短いお経「光明真言」や梵字の「ア」の一文字を書く「大日如来さま」など複数の写経がダウンロードできます。いずれも薄文字で書かれていますので、丁寧になぞりましょう。ここのサイトにはお経を現代の言葉に訳した現代語版写経が掲載されているのも特徴で、同様にダウンロードが可能です。
写経のポイント、写経についてのQ&Aなども、とても分かりやすく書かれているサイトでおすすめです。
名称
金剛院 (こんごういん)
住所 [Google Map]
〒171-0051 東京都豊島区長崎1-9-2
公式サイト
https://www.kongohin.or.jp/
ダウンロードページ
https://www.kongohin.or.jp/sutra.html
大雄寺 公式サイト
栃木県大田原市にある大雄寺 (だいおうじ) の公式サイトでは趣のある字体で書かれた般若心経のお手本がダウンロードできます。
なぞって書く薄文字タイプと、お手本、また、重ねて写し書く事ができる通常の墨の色の2つのタイプをダウンロードする事が出来ます。
名称
大雄寺 (だいおうじ)
住所 [Google Map]
〒324-0233 栃木県大田原市黒羽田町450
公式サイト
https://www.daiouji.or.jp/
ダウンロードページ
https://www.daiouji.or.jp/sutra.html#hannya
お手本・写経用紙をインターネットで購入する
お手本や写経用紙はネットショッピングでも購入できます。
ダウンロードとなぞり書きタイプと写し書きのタイプがあります。また、筆がセットになっている商品もあるので初心者さんにはおすすめです。
今、写経はひそかなブームになっています。心を静める習慣の一つとして是非取り入れてみてはいかがでしょうか。