「麦わら帽子」は誰もが知る夏の風物詩ともいえるアイテムですが、「そういえば、かぶったことないな」、「子供がかぶるイメージ」という人も少なくないようです。麦わら帽子の最大の特徴はその通気性の良さで、蒸し暑い日本の夏にはぴったり。
ここでは、麦わら帽子のおすすめポイントや知っていそうで知らない麦わら帽子のあれこれをご紹介します。
麦わら帽子の良いところ3つ
高い通気性
麦わら帽子のおすすめポイントは何といっても通気性に優れている事でしょう。『帽子は頭が蒸れるので苦手』という人には是非麦わら帽子をおすすめします。
UVカットもばっちり
『通気性がいいのはうれしいけど、紫外線が防げなさそう……』と思われがちですが、麦わら帽子の材料である麦稈真田 (ばっかんさなだ) (※詳細は素材の項目で解説) のUVカット率は90%以上と言われています。つばの長いデザインのものを選べば、紫外線対策はさらにばっちりです。
軽量で型崩れしにくい
素材が軽量のため、つばの大きいタイプにしても重たくなりません。軽量で長時間かぶっていても疲れにくい麦わら帽子はガーデニングや農作業などにもぴったり。型崩れしにくいため、片手でスポッと被れるのもいいところです。
麦わら帽子デメリットと対策方法
水濡れに弱い
麦わら帽子は天然素材のため、水濡れは厳禁です。乾かせば大丈夫だろう……と思っていたら『変色してしまった』、『つばが波打ってしまった』など、残念な事になる場合も。濡らしてしまったときはなるべく早めに乾いた布で拭き、風通しの良い場所で陰干ししましょう。
折りたためないので持ち運びに不便

麦わら帽子は、折り畳んだり丸めたりすることが難しいためバッグなどにしまいにくく、普段布製の帽子を愛用している人には少し不便に感じるかもしれません。また、誤って潰してしまったりすると、わらにダメージが残ってしまう事があるので、扱いには少々注意が必要です。
風に飛ばされやすい

軽量で伸縮性が無い麦わら帽子は風に飛ばされやすいのが弱点。アゴ紐をつけるのが一番安心ですが、子供ならばまだしも、帽子のデザインによってはちょっと嫌ですよね。ここでは対策方法をいくつかご紹介しますのでお気に入りの麦わら帽子を飛ばさないように参考にしてください。
対策方法1:サイズ調整用テープで頭にフィットさせる
サイズが大きくて脱げてしまう場合は、市販されているサイズ調整用テープを帽子の内側に貼って調整しましょう。頭にフィットさせると脱げにくくなります。
対策方法2:帽子クリップ (ハットメル) を使う
コードの両端にクリップが付いたもので、服と帽子を留めます。脱げてしまうことは防げませんが、飛んでしまう心配はなくなるので、風のある日などは付けていると安心です。帽子クリップは100均やアクセサリーショップで売られています。金属製でチャームなどが付いたアクセサリー要素ある帽子クリップも売られているので、ファッションにあわせて選ぶといいでしょう。
対策方法3:ヘアピンで髪の毛に留める
ヘアピンを使って髪の毛と帽子の内側の汗止めテープを留めることで麦わら帽子が脱げたり、飛んでしまうのを防げます。
麦わら帽子の素材と製法

麦わら帽子の素材はその名前のとおり麦わら (麦藁) で、主に大麦のわらが使われています。穂を落とした茎の部分を乾燥させたものが麦わらですが、これをそのまま帽子の形状にするわけではありません。筒状 (ストロー状) の麦わらは平たく潰され、数本を編み麦稈真田 (ばっかんさなだ) と呼ばれる1本の長いテープ状に加工されます。「麦稈」とは麦わらの事で「真田」とは、木綿や正絹の糸を平たく編んだ手工芸の「真田紐」の事をいい、その手工芸で作られたものを麦稈真田と言います。
この麦稈真田を渦巻き状にミシンで縫い合わせて帽子の形状にし、プレスで形を整える事で麦わら帽子が出来上がります。

ちなみに麦わらは英語で「STRAW (ストロー) 」といい、飲み物を飲むときに使うストローはもとはこの麦わらが使われていました。ストローから出来ている帽子であることから、麦わら帽子は英語でストローハットと言います。
農業副産物である麦わらを使った麦わら帽子は地球環境にやさしい、まさにサステナブルなアイテムですね。
麦わら帽子の主な産地
国内においては埼玉県と岡山県が2大産地となっています。どちらも昔から麦農家が多く存在していた為、副業として麦稈真田を作り、需要の高い海外に輸出をしていました。昭和に入りブラザー社が麦わら帽子製造用環縫ミシンを開発、販売したことを機に国内での麦わら帽子の生産が盛んに。その中心は大麦の生産地で、現在でも埼玉県と岡山県には帽子メーカーが多く存在しています。
現在、麦わら帽子は埼玉県春日部市の伝統工芸品に認定されています。
麦わら帽子は何年くらい使う事ができるの?
天然素材で作られている麦わら帽子は布製の帽子に比べて寿命は短く、使用頻度や保管状態にも左右されますが、3年から5年くらいが目安でしょう。高価なものであっても一生ものとはいきません。
使用しているうちにわらが傷み、風合いや手触りが悪くなってきます。また、全体的に変色してきたり、よく手で触る部分や頭に触れる場所が部分的に変色してくることも。
長く愛用するには、なるべく丁寧に扱うように心がけ、お手入れと保管方法に気を付ける事が大切です。
麦わら帽子のお手入れ方法
夏にかぶる麦わら帽子はどうしても汗や汗で流れたファンデーション、日焼け止めなどで汚れがちです。きちんとお手入れをして清潔に使いたいものですね。
とは言え、麦わら帽子は天然素材を乾燥させた物で作られているため水に対してとってもデリケート。丸洗いなどはできません。汚れが気になった時や、シーズンが終り保管する前には適切なお手入れをしましょう
汗止めテープ
汚れがもっとも付着しやすいのは、帽子の内側に貼られている汗止めテープ部分です。汚れが気になった場合には放置せず、早めにお手入れをしましょう。

- 50度前後のお湯に浸した布を固く絞り、トントンと叩くように、汚れを浮かせながら吸い取ります。
汗じみがひどい場合には洗濯洗剤を溶いたぬるま湯を歯ブラシに含ませ、優しく汚れをこすりましょう。ファンデーションの汚れであればメイク落としシートで拭くのもおすすめです。いずれも液体が帽子本体に浸み込まないように注意しましょう。汚れを落とした後は、固く絞った布で洗剤成分を拭き取ります。 - アイロンをあてたりせず、風通しの良い場所で陰干ししましょう。
帽子本体
- やわらかい毛のブラシや歯ブラシで麦わらを傷つけないように優しくホコリを払います。
- 乾拭きが望ましいですが、汚れが気になる場合は50度前後のお湯に浸した布を固く絞り、まずは内側を拭きます。変色や色落ちなどが無い事を確認してから表側を拭きましょう。水分を多く含ませてしまうとつばが波を打ったり、全体が変形してしまう事があります。
- 風通しの良い場所で陰干ししましょう。乾燥をおこたるとカビなどの原因となります。逆さまに干す場合は帽子が潰れてしまわないように、筒状のものの上に置くといいでしょう。
知ってますか?カンカン帽・パナマ帽・麦わら帽子の違い
カンカン帽 (かんかんぼう) は西洋発祥の帽子で麦わら帽子の一種です。一般的に麦わら帽子と呼ばれるものは頭頂部が丸い、もしくは窪んでいる中折れタイプですが、カンカン帽は平らなのが特徴。帽子の高さは概ね10cm程、つばは5cm程で麦わら帽子に比べて固く作られ、全体的にキッチリしたイメージです。
その固さからカンカン帽と呼ばれ、日本では大正から昭和初期にかけて大流行しました。当初は男性用の帽子とされていましたが、現代では歌手の西野カナさんがファッションに取り込んだことで若い女性に流行し、男性用よりも女性用のものの方が多く販売されています。
また、麦わら帽子やカンカン帽と同じように天然素材で作られ、夏に活躍する帽子は他にも「パナマ帽」があります。こちらは素材が麦わらではなく、パナマソウの葉を裂いた紐から作られています。丈夫で柔軟性があり、麦わら帽子よりも比較的に長く使う事ができますが、とても高価で今やセレブ達のおしゃれの必須アイテムになっています。

まとめ
筆者は「麦わら帽子」と聞くと釣りキチ三平・カールおじさん・ルフィらがかぶっている、つばが直角にぐるりと1周長く伸びた”これぞ麦わら帽子”をついつい思い浮かべてしまいますが、つばの両脇が跳ね上がったテンガロンタイプや、トップが平たくリゾートコーデに合うデザイン、つばが垂れ下がった日常使いに馴染むデザインなど、様々なおしゃれ麦わら帽子が売られています。また、HERMESやGUCCIなどの高級ブランドでも取り扱いをしているほどで、麦わら帽子が世界中で愛されている事がわかります。
自分にお似合いの逸品を見つけて、来シーズンは誰よりもはやく夏を先取りしてはいかがでしょうか。