「もーいーくつ 寝ーるーとー お正月ー♪」
お坊さんも息切れしてしまう、師走と呼ばれる年の瀬。そして12月を走り抜けると、すぐにお正月はやってきます。
今回はお正月を迎える時の必須アイテム “鏡餅”についてご紹介してきたいと思います。その歴史・由来、飾り付けのタイミング、鏡開きのやり方など、突き詰めていくと今まで知らなかった発見がありました。
鏡餅っていつからあるの?歴史・由来・飾るタイミングについて

1000年以上前からある。新年を祝う鏡餅文化
平安時代中期の西暦1008年。その頃に紫式部によって書かれた “源氏物語”では、正月行事のことが登場しています。
春の御殿の御前、とりわきて、 梅の香も御簾のうちの匂ひに吹きまがひ、 生ける仏の御国とおぼゆ。
春の御殿の御前は、とりわけ、梅の香も御簾の内の香の匂いと相和して吹き漂い、この世の極楽浄土のように思われる。
~中略~
装束ありさまよりはじめて、 めやすくもてつけて、ここかしこに群れゐつつ、 歯固めの祝ひして、餅鏡をさへ取り混ぜて、 千年の蔭にしるき年のうちの祝ひ事どもして、そぼれあへるに……
装束や様子などをはじめとして、見苦しくなく好ましいようにふるまって、あちらこちらに集まっては、歯固めの祝いをして、餅鏡 (もちいかがみ)まで取り寄せて、「千年の蔭」にも明らかな新年の祝い言をして、羽目をはずしあっていると……
物語を読み解くと、平安時代の宮中ではお食い初めと鏡餅のお祝いが一緒に行われていたようです。また鏡餅はその昔、餅鏡と表現されていたのですね。
また鏡餅は、お正月のもう1つの風習である “お年玉”のルーツとされています。昔、鏡餅は「歳魂 (としだま)」と呼ばれ、これが江戸~昭和期にかけてお金が渡される文化に変わっていったとか。
鏡餅の意味・由来

昔の人々は、先祖の御霊は豊作をもたらす田の神になると考えており、その祖霊がお正月になると“年神様 (正月様、歳徳神とも呼ばれます)”として、高い山から各家庭に帰ってくると信じていました。
鏡餅は年神様がお家に帰ってきた時の居場所、依り代であり、名前はガラス鏡が普及する前に一般的だった銅鏡に由来します。
鏡餅は通常、大きいものが下段に、小さいものが上段に重ねられていますが、下段が太陽、上段が太陰 (月の別名)を現しており、福徳を意味し縁起が良いとされています。
鏡餅の飾るタイミング
鏡餅はお正月の時点ですでに飾られているのが一般的ですが、飾り始める日取りはいつ頃がいいのでしょうか。
12月29日は “二重苦”という言葉遊びがあるほか、31日はお正月の前日となるため “一夜限り”といった捉え方ができてしまいます。そのため、縁起が悪い日を避けた、28日までか、30日に飾るのが良いとされています。
飾り終えた鏡餅を食べる“鏡開き” その由来とは?

鏡開きはいつやるの?
神棚や床の間に飾っていた鏡餅を下げて食べる “鏡開き”は、基本的に “松の内”が明けたあとに行われます。
松の内とは正月飾りを出しておく期間を言い、鏡餅の他にも門松やしめ縄がこの日を目安に片付けられます。
鏡開き、松の内共に毎年変わらない日取りですが、住んでいる地域によって松の内とされている日が異なります。
松の内 | 鏡開き | |
---|---|---|
東日本・九州地方 | 1月7日 | 1月11日 |
西日本 | 1月15日 | 1月15日 or 20日 |
京都府を含む一部地域 | 1月15日 | 1月4日 |
江戸時代のはじめまでは全国的に松の内は15日、鏡開きは20日と日程が決められていましたが、第3代征夷大将軍 徳川家光が4月20日に亡くなったことで、20日が忌日と扱われるようになりました。
この忌日となる知らせが関西圏には正しく伝わらなかったようで、今のようなズレが起こってしまったのだとか。
鏡開きはどうやってやるの?
縁起物であり、年神様の依り代でもある鏡餅。
飾っていた鏡餅を下げて食べる時には、包丁で餅を“切り分ける”ことは切腹を連想するため縁起が悪いとされています。
そのため固くなっているお餅は小槌で叩き割るか、もしくは水につける、レンジで温めて柔らかくするなどして分けるようにしましょう。
鏡餅開きは“新しい年の始まり”を指しているほか、年神様を再び天界へ送る意味が込められています。
1年の験を担ぐためにも、正しい鏡開きを行いましょう。

毎年使えるSDGsな、食べられない鏡餅もある!
ここまで鏡餅について、また鏡開きについて書きましたが、長期間供えたお餅にはカビが生えてしまったり、水に漬けても美味しく頂けなかったりするものです。
ここでは飾るためだけに造られた、ガラス製、木製、そして陶器製の鏡餅をご紹介します。これならお餅の消費期限を気にすることなく新年を祝うことができますね。
ガラス製の鏡餅
ガラス製鏡餅の特徴は何と言ってもその美しさでしょう。
透明~半透明のものが多く、洋風のお家でも違和感なくマッチしてくれそうです。
木製の鏡餅
こちらは木のぬくもりが感じられる木製の鏡餅。
堅苦しくなく落ち着きが合って、厳かな新年情緒を乱すことのない一品と言えます。
陶器製の鏡餅
最後は陶器でできた鏡餅。
ガラス製ほどの艶やかさはありませんが、木製のような落ち着きがあり、本来の“お餅らしさ”一番感じられる鏡餅となっています。
鏡餅の歴史・由来、そして鏡開きのやり方など幅広くご紹介してきました。
日本の伝統文化が忘れられつつある昨今ですが、お正月は一年で一度、新年を清々しく迎えるための大切な行事となります。
古き良き慣習に則って、厳かなお正月を過ごしてみてはいかがでしょうか。