日本では温泉法という法律によって、水温25℃以上または、温泉法の指定成分が1種以上含んでいる地下水が“温泉である”と定められています。そして全国にある温泉の数は、2万7283湯。
温泉は、源泉が湧き出ている場所によって含まれている成分が違っており、西洋医学では治せない病気を治療する目的で温泉に浸かる人もいます。
この記事では温泉の泉質と、身体への効能をご紹介します。
温泉の泉質について
温泉に入って治療する行為は“湯治”と呼ばれ、泉質によって効能がある適応症も異なります。
例えば、白濁色で“にごり湯”と呼ばれる温泉は硫黄を含んでいるため、湿疹・アトピーの治療に最適です。他にも脳卒中のリハビリや、関節症の療法に効果的な温泉もあります。

また、温泉の中には飲用療法として効果的な温泉もあり、浴用と飲用両方の効能をそれぞれ知っておきたいですね。
尚、温泉の水を飲みたい時は、くれぐれも浴槽のお湯を飲まない様にしましょう。飲用効能のある源泉が湧き出る温泉地の場合、大抵、町中に“飲泉所”と呼ばれる設備があるので、温泉を飲みたい場合は飲泉所を利用しましょう。
泉質・効能一覧

単純温泉
泉質の特徴
お湯の触感は柔らかく肌への刺激も少ないのが特徴です。効能成分の含有量は少なめで、子供からお年寄りまで幅広い年代の方々が楽しめる温泉です。
また、単純温泉は“湯あたり”を起こしにくい温泉でもあるため、熱いお湯に入るとのぼせてしまったり、気分が悪くなりやすい人にもオススメです。
効能
- 浴用:自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
箱根湯本温泉(神奈川県)、湯沢温泉(新潟県)、下呂温泉(岐阜県)、道後温泉(愛媛県)、湯布院温泉(大分県)
塩化物泉
泉質の特徴
主成分として塩分を含んでいる温泉で、舐めると塩辛く感じます。塩分は汗の蒸発を防いでくれるため、保湿効果も期待できます。
また、単純温泉と同じく塩化物泉は湯あたりを起こしにくいため、比較的入りやすい温泉になります。
効能
- 浴用:切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
- 飲用:萎縮性胃炎、便秘
箱根湯本温泉(神奈川県)、湯沢温泉秋保温泉(宮城県)、熱海温泉(静岡県)、城崎温泉(兵庫県)片山津温泉(石川県)、指宿温泉(鹿児島県)
炭酸水素塩泉
泉質の特徴
炭酸水素塩泉は、肌のピーリング効果や、毛穴の汚れ除去といった効果があります。尚、不要な角質が取り除かれた肌は、保水力が低下し乾燥しやすくなるので、乳液などでのアフターケアも忘れないようにしましょう。
効能
- 浴用:切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
- 飲用:十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)
小谷温泉(長野県)、黒川温泉(熊本県)
硫酸塩泉
泉質の特徴
お湯は無色透明で、口に含むと苦味を感じます。また塩化物泉と同じく保温効果のある泉質であるため、肌にうるおいを与えてくれます。
そして硫酸塩泉は、血流が向上し傷の治りを早めてくれる効果があります。
効能
- 浴用:切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
- 飲用:胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘
天城湯ケ島温泉(静岡県)、法師温泉(群馬県)
二酸化炭素泉
泉質の特徴
炭酸ガスを含む泉質で、炭酸飲料のようなシュワシュワした気泡を全身で楽しむことができます。炭酸ガスは毛細血管を広げる働きがあり、硫酸塩泉を同じく血流改善効果があります。
二酸化炭素泉は日本でもレアな泉質となるため、興味がある人は探してみましょう。
効能
- 浴用:切り傷、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
- 飲用:胃腸機能低下
長湯温泉(大分県)、湯屋温泉(岐阜県)、十津川温泉(奈良県)、みちのく温泉(青森県)
含鉄泉
泉質の特徴
水に溶けた鉄(銀イオン)を多く含む泉質です。湧き出したお湯が空気に触れると鉄の酸化が進み、次第に黄色から赤褐色へと変色していきます。
効能
- 飲用:鉄欠乏性貧血
登別温泉(北海道)、草津温泉(群馬県)、鳴子温泉(宮城県)
酸性泉
泉質の特徴
酸性泉はヨーロッパではあまりみられない泉質で、殺菌効果がある温泉です。
温泉は無色、もしくは黄色で、肌に触れるとわずかにピリピリしてきます。刺激が強いので、気になる人はお風呂から出る前に、身体を流すようにしましょう。
効能
- 浴用:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
酸ヶ湯温泉(青森県)、蔵王温泉(山形県)、玉川温泉(秋田県)
含よう素泉
泉質の特徴
ヨウ素を含む泉質で、入浴での効能はありません。
飲用効果は、全身の代謝を高め、内臓の働きを促進してくれます。
新陳代謝を高め、皮膚・毛髪のターンオーバーを早めてくれるので、肌トラブルや薄毛に悩む人にオススメな温泉です。
効能
- 飲用:高コレステロール血症
前野原温泉(東京都)、青堀温泉(千葉県)
硫黄泉
泉質の特徴
卵の腐敗臭に似た臭いが特徴で、国内では比較的多い泉質になります。
鉄・銅等の金属は、酸化して黒くなってしまうので、アクセサリー等は入浴前に外す様にしましょう。
また、肌の弱い人は皮膚炎を引き起こすリスクがあるので注意が必要です。お風呂から上がる時には必ずシャワーで身体を流すようにしましょう。
効能
- 浴用:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症ー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症
- 飲用:耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症
登別温泉(北海道)、日光湯元温泉(栃木県)、小涌谷温泉(神奈川県)、雲仙温泉(長崎県)、黒川温泉(熊本県)
放射能泉(ラジウム泉)
泉質の特徴
放射能と聞くと警戒されがちですが、温泉の泉質として書かれる放射能泉はレントゲンの放射線量より少なく、極めて少量の線量です。
放射能泉は、腎機能の改善/神経痛/リューマチ/神経麻痺/自律神不安定症などに効果があり、別称“通風の湯”とも呼ばれています。
効能
- 浴用:高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎
増富温泉(山梨県)、飛騨高山温泉(岐阜県)、有馬温泉(兵庫県)、三朝温泉(鳥取県)